目次
背景
情報化社会の進展に伴い、Iot、クラウド、ビッグデータ、AI、ブロックチェーン技術を活用したソフトウェアを発注又は制作する事業者が増えています。
この分野においては、事業の研究開発的な要素も強いため、支出した金額の会計処理の判断に迷う場合があります。 この場合の判断の基準として、研究開発費等に係る会計基準があります。
解説
1.定義について確認しましょう。3つの用語が定義されています。
研究とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探求をいう。
開発とは、新しい製品、サービス、生産方法(以下「製品等」という。)についての計画もしくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画もしくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化することをいう。
ソフトウェアとは、コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム等をいう。
2.研究開発費に係る会計処理を確認しましょう。
研究開発費は、すべて発生時に費用として処理しなければならない。
なお、ソフトウェア制作費のうち、研究開発に該当する部分も研究開発費として費用処理する。
上記のように記載されているため、ソフトウェア制作が「研究又は開発」のいずれかに該当するかどうかの確認が必要になります。
定義を見ると「計画的な調査」「探究」、「計画・設計」という文言があります。このあたりを自社にて証明することが必要なります。
3.研究開発費に該当しないソフトウェア制作費に係る会計処理について確認しましょう。
(1)受注制作のソフトウェアに係る会計処理
受注制作のソフトウェアの制作費は、請負工事の会計処理に準じて処理する。
(2)市場販売目的のソフトウェアに係る会計処理
市場販売目的のソフトウェアである製品マスターの制作費は、研究開発費に該当する部分を除き、資産として計上しなければならない。ただし、製品マスターの機能維持に要した費用は、資産として計上してはならない。
(3) 自社利用のソフトウェアに係る会計処理
ソフトウェアを用いて外部へ業務処理等のサ-ビスを提供する契約等が締結されている場合のように、その提供により将来の収益獲得が確実であると認められる場合には、適正な原価を集計した上、当該ソフトウェアの制作費を資産として計上しなければならない。
社内利用のソフトウェアについては、完成品を購入した場合のように、その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合には、当該ソフトウェアの取得に要した費用を資産として計上しなければならない。
機械装置等に組み込まれているソフトウェアについては、当該機械装置等に含めて処理する。
(1)を除いて資産計上することが原則です。(1)については工事完成基準又は工事進行基準のいずれかの選択になります。
4.税法の場合は「試験研究費の額」として定義があります。
こちらは租税特別措置法により、税額控除(例:法人税が減額されます。)の適用を受けることができます。ただし、上記に説明した研究開発費と定義が異なります。 税制適用を受ける場合には事前に顧問税理士としっかり打ち合わせをしましょう。
リンク:一般試験研究費の額に係る税額控除制度5.参考まで税法で規定する繰延資産開発費も混同しがちなので定義も確認しましょう。
法人税法施行令第14条は会計上の繰延資産と税法で定められた繰延資産が列挙されています。
(1)会計上の繰延資産である「創立費」「開業費」「開発費」「株式交付費」「社債等発行費」
(2)税法の例示列挙
①自己が便益を受ける公共的施設の設置又は改良のために支出する費用
②資産を賃借するための権利金等
③役務の提供を受けるための権利金等
④製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
⑤その他自己が便益を受けるための費用